事例紹介・贈与契約書の無い金地金の贈与、認められるのか。

 ある資産家の子供がある日、金地金25kgを約5,000万円で売却しました。

 そうしたところ、その売った金地金は資産家である親のものだ。その売った日に親から金地金をもらって売ったんだろう。だから5,000万円の贈与で贈与税課税だ、と課税され、裁判となった事例があります。京都地裁の平成27年10月30日判決、税務弘報の連載「実務に役立つ判例研究」平成29年12月号で紹介した事例です。
 結論としては、やはり積極的に贈与時期を証明する書類が必要で、そうであれば贈与契約書をつくっておくのが一番、ということです。

贈与は過去に受けたが贈与契約書等はない

この金地金を売った人は過去に親からもらった金地金で、確かに贈与税の申告はしていないが過去のことだ、として贈与税課税の取消しを求める裁判をおこしました。
 まずいことにこの人は、過去に金をもらったと主張している時に贈与税の申告もしていなければ、贈与契約書の作成もしていませんでした。そんなような状況で金地金の贈与の時期はどのように判断されることとなるのか、が争点となった事案です。

贈与の時期は贈与税課税においては重要な要素の一つ

たとえば、5,000万円分の金地金の贈与でも、極端な話、毎年100万円分ずつ、50年かけて贈与が行われたのであれば贈与税は課税されません。それが一度に5,000万円分の贈与、となると親子間の場合、2,049万5,000円の贈与税負担となってしまいます。その贈与がいつ行われたものなのか、というのはとても重要な要素になるわけです。
 そのため、贈与税課税対策としても、通帳等にも記録の残らない現金や金地金といった現物の贈与については、特に贈与契約書でいつ贈与が行われたのかについて記録を残すことが重要といえます。この事案ではそういった書類がなかったわけですが、贈与契約書が無い状況でどのような判断がなされたのでしょうか。

立証責任は税務署側、納税者はその立証を崩せばいい

裁判所の判断は、まず、贈与の時期の立証責任は税務署側にある、としています。贈与税を課税する、という側に立証責任があるんだ、ということですね。
 これに対し納税者には具体的な贈与日付の立証、ではなく、税務署の立証に合理的な疑いを生じさせ、これを不奏功にすれば足りる、としています。
 
 ここだけ読むと納税者側の証言だけで大丈夫そうですが、裁判所の判断はそうではありませんでした。

ただし、やはりそれなりの証拠が必要

上記前提のもと、まず25kgの内、18kgにつていは、この金地金の贈与を行った親子が作成していた金地金保有量在庫確認文書やその贈与の動機等から税務署の立証に疑いがある、と判断され贈与税課税は取り消されました。在庫確認文書、という証拠書類があり、周辺の方の証言と動機等が一致したことが大きかったようです。

 残りの7kgについてもこの親子は過去に贈与があったと主張しました。しかし、上記18kgにはあった贈与の動機が不明であり、金地金保有量在庫確認文書もありませんでした。唯一提出された証拠は手書き明細書でしたが、その明細書についてもその記載内容を認めるに足りる明確な証拠がなく、7kg分については税務署の論拠を揺るがすことはできない、と判断され贈与税課税は取り消されませんでした。
 結局、積極的に贈与時期を証明する証拠が裁判の場では求められる、ということですね。税務署の立証を崩せばいいのなら証言だけでいいのか、と思いきやそうではありませんでした。


結論・やっぱり贈与契約書をつくりましょう

贈与契約の成立は意思表示の合致で足りるとされています。あげるよ、もらうよ、という合意があり、実行されればそれで足りるはずですが、このように出るとこへ出たときにはやはり具体的な証拠書類等がものを言う、ということです。

 贈与税の非課税規定の範囲内だから、書類までは、と考えず贈与を行う、という場合には贈与契約書を作成し、贈与の時期を証明できるようにしておくことがやはり重要ということになります。

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