税金爆死・なぜベビーシッター料金の補助に所得税がかかるのか
東京都のベビーシッター利用支援制度が話題になっています。
待機児童対策の一環で保育所に入園できなかった場合に格安(1時間150円)でベビーシッターを利用できる、という制度です。本来は一時間2,400円、とのことですから本当に格安ですね。
これだけみるとすごくいい制度のように思いますが、この制度を利用するとなぜか所得税や住民税が課税されることとなります。本来のベビーシッター料金2,400円と自己負担額150円との差額2,250円分の収入が発生すると考え、その収入を自分で計算し確定申告する必要がある、というのです。
なぜこんなことになってしまうのでしょうか。
個人が経済的に得したら基本的になんでも所得税
おかしい、と思われるかもしれませんが所得税の基本的な考え方からすると実は当然の話、となってしまいます。所得税は個人が経済的に得したら基本的にはすべて課税対象、という考え方をとっています。
宝くじやオリンピックの報奨金が非課税、とされているのは特別にこの収入には課税しません、という法律があるからです。ベビーシッター料金の助成もそれだけ助成を受けた人は得したでしょ、ということでベビーシッター料金の助成には課税しません、という特別な法律がない限り所得税の課税対象となってしまうのです。
所得税まで含めた実負担額はいくらとなるのか
所得税まで含めた実負担がいくらとなるのか、その人の収入状況によるため正確な計算はできません。所得税は累進課税で、収入の高い人ほど負担も大きくなるようにできています。変な話ですがベビーシッターを利用すればするほど収入もあがり、税率もあがってしまう、ということもありうるのです。
ただ、年収500万円の方が9カ月、毎月220時間(1日11時間×20日)利用した場合、税負担額は年額で1,242,000円程度、と東京都は試算しています。この場合、自己負担297,000円(150円×11時間×20日×9カ月)と合計で1,539,000円の負担です。
ひと月当たりになおすと1,539,000÷9カ月で171,000円、保育園と比べるとかなり高額ですね。
実際には9カ月も利用せずにすむかもしれませんし、もっと利用せざるをえないかもしれません。
長く使うと負担割合上昇、負担額は最後までわからない
この制度の問題は、長く 使えば使うほど収入が増えたことになり税率もあがり負担割合もあがってしまう、という点と、実際に確定申告を行い納税するまでは本当の負担額が誰にもわからない、という点でしょう。
待機児童対策として苦肉の策なんだとは思いますが、もう少しいい制度設計を考えてほしいですね。
最高負担額はどのくらいとなるか
最後に最高でどの程度の負担となるか計算してみます。
所得税と住民税、合計での最高税率は55%です。
毎日標準保育時間目いっぱいベビーシッターを利用して、1日11時間、月間20日利用、これを一年間つづける、と仮定します。
そうするとこんな計算で年間594万円の収入があったことになります。
2,250円×11時間×20日×12カ月=5,940,000円
ベビーシッター補助金に経費はないでしょうから収入がそのまま課税対象となって負担する税金の額は次のような計算になります。
594万円×55%=3,267,000円
びっくりですね。ただそれでも本来2,400円×11時間×20日×12カ月で6,336,000円かかるベビーシッターを自己負担396,000円(150円×11時間×20日×12カ月)と3,267,000円の合計3,663,000円で利用できる、と考えれば助成の意味はあるでしょうか。最高税率の方でも260万円以上得した、という計算になりますね。