自署押印は平成30年度改正で廃止済。でも、税理士がつくる紙の申告書には署名押印が必要?
法人税の申告書には代表者、経理責任者等の自署押印が必要でした。
しかし、平成30年度税制改正により廃止されています。
自署押印ってなに?
そもそも自署押印ってなにか?というところですが、文字通り自ら署名して印鑑を押す、ということです。
役所や銀行の書類なんかで「自署または記名押印」なんて書いてあることがあります。
この場合には、自ら署名するか、名前を印字したりゴム印等で押したりした上で印鑑を押す、必要があります。
逆に言うと、署名した場合には印鑑いらないです、というのが「自署または記名押印」なんですね。
法人税の申告書は「自署または記名押印」ではなく、自署押印が改正前は必要でした。
自署押印って大変?
電子申告をはじめる前はできあがった法人税の申告書を会社にお持ちし代表者の方に署名押印していただいていました。
儀式的な面もあって、これはこれでよかったとは思うのですが署名される方は大変です。
会社一つならいいですが、いくつも会社を経営してみえる場合、子会社の代表もかねている場合、不動産投資をされていて物件毎に会社をつくってみえる場合、等々様々な事情で一人の方がたくさんの会社の代表になっている場合があります。
そうなると「代表者の自署」が求められているので代筆もできず、お一人で山のような書類に一度にサインする、なんていうこともありました。
支店や支社が全国にあって、という場合も同様です。
それが改正によって自署が廃止されとても楽になりました。
改正後は記名(印字やゴム印)でOK
改正後、代表者名は記名(申告ソフトでの入力や判子)でOKとなりました。
申告書ソフトで印刷して印鑑押すだけですから儀式的に代表者にでてきていただく必要はなくなった、ということです。
電子申告をされていない場合にはとても楽になったのではないでしょうか。
税理士が電子申告する場合
税理士が代理で電子申告をする場合には税理士の電子署名だけで大丈夫でした。
税理士が電子署名する場合は代表者の電子署名不要、となってから電子申告が一気に普及しました。
私自身そうなって以降は全ての申告を電子申告で行っていたので、平成30年度の改正は正直あまり意識はしていませんでした。
税理士が申告書をつくって書面提出する場合は代表者の署名が必要
もう何年も電子申告しかしていなかったのですが今年久しぶりに書面で申告書を作成し提出しました。
平成30年度改正で代表者の自署押印は不要となりましたが実は税理士が申告書を作成する場合には税理士法の規定により代表者の自署がまだ必要です。
税理士法30条が次のように規定しています。
(署名押印の義務)第三十三条 税理士又は税理士法人が税務代理をする場合において、租税に関する申告書等を作成して税務官公署に提出するときは、当該税務代理に係る税理士は、当該申告書等に署名押印しなければならない。この場合において、当該申告書等が租税の課税標準等に関する申告書又は租税に関する法令の規定による還付金の還付の請求に関する書類であるときは、当該申告書等には、併せて本人(その者が法人又は法人でない社団若しくは財団で代表者若しくは管理人の定めがあるものであるときは、その代表者又は管理人)が署名押印しなければならない。
この条文では、税理士が申告書を作成する場合
まず税理士本人が署名押印しなければならない
そしてその申告書の本人(法人の場合は代表者)も署名押印しなければならない
とされています。
時代遅れの条文だ、ともいえますが税理士は電子申告しなさい、ということなんでしょう。
ちなみに、署名押印の必要の有無をまとめるとこんな感じです。
①紙の申告書・税理士無し 記名押印で可
②紙の申告書・税理士有り 自署押印が必要
③電子申告 ・税理士無し 代表者の電子署名が必要
④電子申告 ・税理士有り 税理士の電子署名のみで可
税理士がいるのに紙の申告書をだすなら自署しなさい、ということですね。
税理士たるもの電子申告の推進に協力せよということかな、と思います。
電子申告やっていきましょう
久々に紙の申告書をつくってサインして代表者にサインをいただいて、とやってみると儀式的にはいいものだな、と思いました。
ただ電子申告はどんどん推進されています。
キャッシュレスと共にペーパーレス社会へとすすんでいくでしょう。
大法人は電子申告義務化されました。
個人事業主フリーランスの申告も電子申告をしないと青色申告特別控除が減額されてしまいます。
これらの方はもう電子申告が必須ですね。
中小法人も電子申告が義務化されるでしょうしそれを見据えて準備していきましょう。