千葉で個人事業税の過大徴収・県のミスでも過去の分は返還不能?国家賠償請求なら可能か

千葉県が個人事業税を過大徴収してしまっていたとのこと。

 産経新聞:千葉県が個人事業税を過大徴収 78人から計4220万円

約4,220万円過大に徴収してしまっていたようですが、還付できるのは平成28年分までで、それ以前の分は時効で還付できない、と千葉県はしています。

還付金の時効は5年?

確かに地方税法第18条の3で還付金の時効は5年とされています。

(還付金の消滅時効)第十八条の三 
地方団体の徴収金の過誤納により生ずる地方団体に対する請求権及びこの法律の規定による還付金に係る地方団体に対する請求権(以下第二十条の九において「還付金に係る債権」という。)は、その請求をすることができる日から五年を経過したときは、時効により消滅する。

5年を超えてしまうと還付金の請求権が消えてしまうんですね。

これを根拠に5年過ぎてしまった平成27年分以前の過大徴収については還付できない、と千葉県はいっているわけです。

千葉県のミスなのに還付請求できない?

ただ、自ら計算して納税する所得税なんかと違い個人事業税はお上が計算して納付書を送ってくるタイプの税、賦課課税の税金です。

つまりこの過大徴収も千葉県がミスして多めにとっていたわけです。
自分でミスして多くとって、それが最近判明したけど時効だからもう返せません、といってるということです。

お上のミスなのに、自治体のミスなのに返してもらえないの、と思うのが人情ですね。

国家賠償請求なら可能

還付を求めることができないわけでもないです。
国家賠償請求、という方法があります。

国家賠償請求権とは、公務員の不法行為によって損害を受けたときに損害賠償を請求することができる権利、です。
自治体のミスで税を多く納めていたのなら賠償してくれ、ということができるわけです。

実際、過去に同じような個人事業税の課税誤りでの国家賠償請求訴訟があります。
東京地裁平成21年9月18日判決です。

この事例では本来個人事業税が課税されない規模の不動産賃貸業を営む個人に個人事業税を課税していた自治体が国家賠償請求により過去の個人事業税の還付を求められました。

結論としては自治体の責任が認められ納税者勝訴、5年を超えて個人事業税の還付が行われています。

国会賠償上の過失の有無の判断は次のように行われました。

原告の不動産貸付けが不動産貸付業の認定基準を満たさず、個人事業税の課税要件がないにもかかわらず、平成11年度から平成15年度まで、原告に対し、個人事業税の賦課決定をし、その各決定の際、大田都税事務所の課税担当職員は、確定申告書の添付書類の記載からは、本件土地が住宅用土地であることが明らかではないのに、原告に対し、本件土地が住宅用土地であるか否かについて電話又は書面で問合せをしたこともなく、本件建物の登記簿謄本やブルーマップを確認することもなかったのであるから、上記各賦課決定は、職務上通常尽くすべき注意義務を怠ったものというほかはなく、国家賠償法上の違法性があるものというべきである。

都税事務所職員が納税者に確認もせず、書面での確認もせずに課税していたから都税事務所に責任あり、とされたわけです。

千葉県での過大徴収も不動産賃貸業の方に対してのようですからこの東京地裁判決と同じような状況なのかもです。

そうであるのなら国家賠償請求も同様に認められるでしょう。

実際のところはどんなミスなのかわかりませんが同じような状況なのであれば訴訟を待たずに還付してほしいところです。

実際、固定資産税の課税誤りについては自治体側のミスについては国家賠償請求訴訟を待たずに5年を超えて還付を行っている自治体が多くあります。
それほど賦課課税における課税権者である自治体の責任は重い、ということです。

裏返すと申告納税における納税者の責任も重いのですが。

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