毎日新聞が税法上中小企業に?資本金を1億円に減資すると税務上は何がいいのか
毎日新聞が税法上中小企業になる、とニュースになっています。
共同通信:毎日新聞、資本金を1億円に減額 中小企業扱い、税優遇措置も
税法上の中小企業とは、というと定義が難しいのですが、資本金1億円を境目に取り扱いが変わるものがたくさんあります。
じゃあ何が変わるのというとだいたい次のようなことです。
資本金1億円で以下で色々と取り扱いが変わること
1.法人税の税率が軽減される
通常23.2%のところを所得800万円までは15%ですむようになります。
2.過去の赤字を100%繰り越して翌年以降の黒字と相殺可能に
大法人の場合は赤字の半分しか繰り越せない。いずれも最長10年です。
3.今年の赤字を前年の黒字と相殺して税金の還付を受けられるようになる
繰戻還付というが大法人はできません。
4.年間800万円までは無条件で交際費の損金参入が認められる。
大法人は飲食費の半額までです。
そして飲食費以外は税金計算上経費となりません。
資本金100億円を超えると全く損金、税金計算上の経費となりません。
厳しいですね。
5.貸倒引当金の損金算入が可能に
売掛金等の回収不能に備える貸倒引当金ですが税金計算上は実際に貸し倒れるまでは経費にするな、という考え方が原則です。
その貸倒引当金が一部損金算入可能となります。
6.外形標準課税の対象外となる。
地方税の一種でその名の通り利益ではなく、外形に対して課税される。
資本金や支払い給与額等をベースに税を計算するので赤字でも納税が必要となる。
それがなくなるので赤字の場合は納税なしとなる。
まだ他にもありますが資本金が低いと色々と税務上有利、ということは間違いありません。
一番大きいの外形標準課税が対象外となること
毎日新聞は2020年3月期決算で70億円弱の大赤字、とのことです。
決算書は赤字でも税金計算上は黒字、ということもありますが、赤字なのであれば資本金が1億円になっても上記1から5の優遇は特に嬉しいものではないはずです。
税率が下がっても、損金算入可能額が大きくなっても、もともと赤字で税金を納めていないのであれば関係ないですから。
そうであるとすると1億円への減資によって一番嬉しいのは、6.外形標準課税の対象外となる、でしょう。
外形標準課税では赤字でも納税が必要となりますが減資によってそれを納めなくてもよくなります。
どの程度の納税があったかはわかりませんが相当な節税となるはずです。
批判はあるかもですが経済合理性は高い
会社をつくろうとしている顧客から、資本金はいくらにしたらいい?と質問を受けた税理士事務所職員が、いくらでもいいですよ、と答えて大問題になって裁判にまでなった、という事例があります。
資本金の額によって税務の取り扱いは色々と変わりますからいくらでもいい、ということはないんです。
資本金の額をどうするか、は様々な視点から考えるべきことではありますが、当然その視点の一つに税務の視点もはいっていくるわけです。
毎日新聞の減資が節税目的かどうかはわかりません。
まさか外形標準課税の対象外となりたいから減資します、とは発表しませんし。
節税目的なんてけしからんという批判はあるでしょう。
その後の影響等を考えると本当にいい選択となるかどうかまではわかりません。
が、税もコストと考えると経済的な合理性は非常に高い選択といえます。