個人住民税の調整控除
個人住民税の内、個人の所得について課税されるものを個人住民税所得割という。国税でいう所得税にあたる税となる。
基本的には所得税と同じ計算方法であり、
納税額=(所得金額-所得控除額)×税率-税額控除
と理解して問題ないのだが、細かな点がいくつか異なっている。その内の一つに、調整控除という住民税独自の控除項目がある。先日、学生からこの調整控除について質問があり、びっくりしてしまった。
調整控除は、住民税独自の控除項目で、平成19年の税源移譲前後の税負担調整を目的としてつくられたものだ。
平成19年度の国から地方への税源移譲により、住民税の税率が引き上げられ、所得税の最低税率が引き下げられた。
従前最低税率 所得税10%、住民税5%
税源移譲後最低税率 所得税5%、住民税10%
税源移譲前後で、所得税と住民税の合計税率は変わらないため個人の税負担額は変わらないが、個人住民税の金額が増加することとなった。
しかし、所得税と住民税では所得控除額に差があり、税率が同じであったとしても税率を乗ずる課税所得金額に差が生じる。
この、人的控除の差額について調整をとるのが調整控除である。
例 基礎控除 所得税38万円、住民税33万円
扶養控除 所得税38万円、住民税33万円
特定扶養 所得税63万円、住民税45万円
調整控除は、その個人の所得状況等によっても変わってくる。詳細は各自治体のHPを参照してほしいが、基本的にはこの人的控除額の差額×5%とされている。税源移譲前後の税率差が5%であるため、その5%分を調整しよう、という理屈だ。
これによって、下記の計算のように、同じ状況の人の場合、税率変更後も納税額が変わらないように調整されている。
所得100万円、所得控除は基礎控除のみ、の場合
移譲前 所得税100-38=62 62万円×10%=62,000円
住民税100-33=67 67万円× 5%=33,500円
納税額 95,500円
移譲後 所得税100-38=62 62万円× 5%=31,000円
住民税100-33=67 67万円×10%=67,000円
合 計 98,000円
調整控除 50,000×5%=2,500円
納税額 98,000円ー2,500=95,500円
住民税の非常に細かい点であり、質問をくれた学生はよく調べたなと思って感心してしまった。
住民税は所得税と違い、賦課課税、つまり、自治体が納税額を決定し、納税額を通知してくる。自分で計算しなくていいので楽なように思われるが、最近も、ふるさと納税を行ったが、住民税から控除されていない、というトラブルが全国的にあったようである。
住民税決定通知書を自分で確認し、自治体の計算が正しいのか、チェックをできるようにしなければならない。