裁決事例紹介・外国人(非居住者)から土地を買う場合源泉徴収が必要です。

 昔バブルの時代に日本人が海外の土地を買いあさったとかなんとかききます。同じように、日本の土地も海外の方の投資対象となっている場合があります。

 普段土地の売買を行うときに源泉徴収なんて考えることはありません。ただ、相手が外国人(非居住者)の場合には少し考えないといけません。

 非居住者の場合、日本国内に原因のある所得について所得税を納める必要があります。ただ、現実として真面目に申告納税してくれる人がどれくらいいるのか、という問題があります。

 そこで税のとりっぱぐれを防ぐために、非居住者から土地等を日本人(居住者)が購入した場合には代金を支払う際に代金の10.21%を天引きして国に納めてね、ということになっています。
 
 参考 国税庁タックスアンサー・非居住者等から土地等を購入した場合

 怖いのは、個人でも事業者でなくても源泉徴収義務がある、とされていることです。一定の除外要件(個人が自己又はその親族の居住の用に供するために土地等を購入した場合であって、その土地等の譲渡対価が1億円以下である場合)もありますが、仲介に入る不動産事業者は税務について詳しい人ばかりではありませんし注意が必要です。

源泉徴収をしなかったらどうなるか

もし知らずに2億円の土地を非居住者から購入し、天引きせずに2億円全額をその非居住者に支払った場合、後日税務署から2,042万円の源泉所得税の納税を求められます。2,042万円納税後に非居住者から返金してもらえればいいですが、なかなか難しいでしょう。そうすると本来2億円の支払いだったはずが、2億2,042万円の支払い、となってしまうわけです。

 そんな源泉徴収義務が問題となった事例があります。国税不服審判所平成30年4月4日裁決です

国税不服審判所平成30年4月4日裁決・納税者の負け

 土地の買主である納税者が相手が非居住者とは知らずに土地を買いました。そして後日、非居住者から土地を買ったのだから源泉所得税を納めなさい、と税務署からいわれてしまった、という事案です。


 この事案では土地を売ったのはオーストラリアの居住者でした。売主が日本の居住者ではなかったため、買主は源泉徴収義務を負うこととなります。しかし、売買契約書や領収書には日本国内の住所が記載されており、契約書からは取引の相手が非居住者であると判定することは困難な状況でした。そのため、買主は相手が非居住者であるとはわからず源泉徴収を行わなかった、と主張しています。

 ただ本事案の場合、覚書にはオーストラリアの住所が記載されていたようであり、少なくともその時点で確認を行うべきであったでしょう。売主は登記簿についても名義変更時に住所変更を行っており、確認をとれば現在の住所はオーストラリアであることはすぐに判明したはずです。審判所もこの点を指摘して源泉徴収義務は免れないとし、買主である納税者が負けています。

取引の相手方についての確認義務をどこまで負うのか

 こういった確認義務をどこまで一般の納税者が負うべきかについては、議論がなされるべきでしょう。非居住者から不動産を購入する機会も珍しくはなくなってきていますが、取引の相手方が非居住者であるかどうかは、常に明らかであるわけではありません。
 日本の土地等を持っているくらいですから、日本に一時的な居住先をもっているかもしれませんし、契約書等にはそこを記載するかもしれません。
居住者であるか否かは裁判の争点となることもあるほどで、一般の納税者が得られる情報のみで簡単に判断できる場合ばかりではありません。国際化がすすみ非居住者との取引を行う機会は今後も増加するでしょう。納税者は取引相手が居住者であるかどうかについて何を確認するべきか、現在は何の基準もありません。そういった意味では法的安定性、予測可能性が担保されていない状況となってしまっています。

居住者か非居住者かの判定や「住所」の判定においては、住民票等の公的な情報だけではなく、生活の本拠たる実態の客観性が重要とされています。公的情報以外の調査まで一納税者に求めるのは酷ではないでしょうか。

源泉徴収義務を課すのであれば、相手に居住者証明の提示を導入する等、法的安定性や予測可能性を担保できるような手段を国税の側が提示していくべきでしょう。
ただ、現時点ではそういったことはなく、審判所の判断からしてもよほどのことがない限り非居住者と知らずに取引をした、という言い訳は通じそうにありません。投資不動産や一億円を超える土地を購入する場合にはよくよく注意が必要といえます。

 

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