ベビーシッター利用料が消費税非課税となると値上げにつながる?
ベビーシッターや5人以下の認可外保育施設の利用料について消費税を非課税とする方向で政府、与党が検討中、と一斉に報じられた。
消費税が非課税となると利用者にとっていいことのように思われるが、ベビーシッターの事業者からするとそんなに単純な話ではない。消費税の仕組み上、シッター利用料の税抜き本体価格は多少なりとも値上げをする必要がある。
事業者が国に納める消費税の計算方法は次のような感じである。
納税額=預かった消費税-支払った消費税
売上3,000万円、経費1,500万円(全て消費税がかかるモノと仮定)という事業者の場合、
国に納める消費税は
預かり消費税 300万円-支払消費税 150万円=150万円
事業者からすると、150万円納税しなければならないが、それはあくまで消費者から預かった300万円の一部を納めているだけ、ということなる。しかも、納める際には経費にかかった消費税を差し引いた残額を納めることとなる。
このように、消費税は基本的に損益に影響しないような仕組みになっている。
ベビーシッター利用料が消費税非課税となった場合、どうなってしまうのか。
消費税が非課税となり、売上が100%消費税非課税のものとなると、消費税を納める必要はなくなる。しかし、経費にかかる消費税150万円の支払は変わらず必要で、この支払った消費税は返してもらうこともできないためベビーシッター事業者の負担となる。
売上が非課税となると、消費税は関係ないように思われがちだが、実は消費税の負担者として大きく関係することとなる。
結果、この150万円は利用料の値上げ等で利用者に負担してもらわなければ、ベビーシッター事業者の経営は非課税化以前より悪化する、ということである。
同じ問題は病院でも生じている。社会保険診療報酬は消費税非課税である。しかし、病院で使われている医療機器等は消費税がかかっているため、収入が変わらなければその分病院の収益は悪化する。
これに対応するため、消費税率が10%に引き上げられた10月1日に、診療報酬の一部が引き上げられている。
つまり、税の理屈では消費税が非課税となると税抜き本体価格の値上げが必要、となってしまうのだが一般の利用者に消費税が非課税となったので税抜き価格を値上げします、といっても受け入れられないと思われる。
もちろん値上げ幅は10%未満におさまるはずであり、消費者の負担額自体は非課税化以前より少なくなるはずである。しかし、一般消費者の感覚からすると何故値上げなのか?となってしまうだろう。
消費税非課税化は、認可保育所等と同様に非課税にしよう、ということのようであるが、消費税改正は様々な影響がある。ベビーシッターや5人以下の認可外保育施設事業者のためにもそういった点についての広報もあわせて行っていただきたい。